よく質のいい卵子や質のいい受精卵、他にも質のいい精子など『質』について考えることがよくあります。ここで言う質は「遺伝子的に問題のない」という意味で使われることが多いと感じます。本日はこの『質』について考えていきます。
質が良ければ必ず出産までいけるの??
必ずではないけど確率は高くなるみたい
いつもながら恐縮ですが…鍼灸師には遺伝子を見る力はないので結果が出た(出産に至った)ことから考えていきます。
排卵までの環境
卵子は胎児の頃から既に卵巣にあります。他の体の細胞とは違い代謝されて新しい細胞が作られるわけではなく、既にある卵子の種を卵巣の中で排卵できる大きさの卵子になるまで育てます。つまり30歳の方の卵子は30年前からの細胞で40歳なら40年前にできた細胞なのです。私はずっと卵子の持っている遺伝子は初めから異常の有無が決まっていて、異常が少ないものから育つから若いほうが遺伝子異常が少ないのかな?と考えていました。
しかし、様々な患者さんの治療内容や検査結果を教えてもらったり、病院での対応を聞いていたら…もしかしたら育つ過程が大事なのかな?と考えが変わっていきました。ここからはその理由について書いていきます。
ホルモンの流れ
鍼灸師としての体感的に、3か月以上施術してから採卵した卵子の方が出産までいける確率が高い感じがします。鍼灸の初回時にすでに凍結胚がある状態で来院というパターンが1番多いのですが、この時点で凍結してある胚ではうまくいかず、再び採卵してからスムーズにいく方が多いです。それ以外だと、鍼灸の初回の段階では卵子が育たず採卵ができない、採卵しても空胞、受精しても分割しないなど移植の前段階で足踏みしてしまう方も凍結に至ることが増えます。
鍼灸で何が変わるのかを考えてみると【血流】【ホルモン】の2つになります。血流が良くなることでホルモンが届きやすくなり、ホルモンが届いた臓器もまたホルモンが出やすくなるので様々な臓器の働きや代謝が良くなります。これによって卵子の質が変わっているのかな?と推測します。
食べ物の消化・吸収
最近では病院オリジナルのサプリを販売しているのを見かけます。私がとても信頼している病院では様々な検査でその方に必要な栄養素が何かを考えサプリを提案してくれて、これが結構結果を出しています。サプリで補うことは答えが見つかっている場合には効果を期待できるかもしれません。
鍼灸では消化・吸収の機能を上げることも可能ですのでこれも相まって卵子の質が向上するのではないかと考えています。
《ホルモンの流れ》《食べ物の消化・吸収》から分かることは卵子が育つ環境を、卵子が育ち始めるとことから整えておくことが重要だと思います。
東洋医学と卵子
東洋医学には《先天の精》《後天の精》という考え方があります。先天の精とはその人が元々持っている生命力のようなもので、後天の精は生まれてから体を養うものです。ツボに置き換えると先天の精は腎が深く関り、後天の精は脾胃が関係してきます。東洋医学での腎の役割は水分代謝、体を温める、生殖能力など現代の腎臓とは役割が異なる部分もあり、脾胃は消化・吸収に関係してきます。胃は分かるけど脾臓って消化に関係あるの?と思われるでしょうが、ここでは東洋医学での考え方になりますので別物として読んでいただけると幸いです。
以前、私は卵子の先天ってどこの部分を指しているのか?と勉強会で質問したことがあります。そこでの回答は排卵以前ということで、卵子が卵巣内にあるうちは先天の精の力が関係し、排卵してからは後天の精の力が重要とのことでした。(一般的な考え方だと生まれる前が先天的と考えますが、東洋医学ではもっと前段階での話になります。)
しかし、現代の生殖医療に関して色々学んでいくと、もっと前の話しな気がしてきます。上の項目にも書きましたが卵子を育てるのに必要なのはホルモンを届けるための血流と卵子を育てるためのホルモン、それと栄養です。ホルモンと血流は肝のツボの働きですし栄養は脾胃の働きです。先天の精である腎気の下がり方を緩やかにし、脾胃で消化・吸収した栄養を肝の働きでホルモンと供に卵巣へ届きやすくするのが、東洋医学からの質のいい卵子に出会うためのアプローチだと私は考えています。
まとめ
卵子という考えがなかった時代から、妊娠しにくくて困っていたご夫婦はたくさんいました。もちろん、そんな方々すべてを救ってきたわけではないと思います。それでも何百年も前から妊娠しやすくなるように施術してきた叡智の蓄積が東洋医学にはあります。そして現代では卵子の成長のメカニズムや受精、分割、着床など細かいところも少しずつ分かるようになってきたおかげで東洋医学的にも施術しやすくなっているのではないかな?と思います。卵子の質でお悩みの方は1度東洋医学専門の鍼灸院へ相談してみてはいかがでしょうか。
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